近松郷土学習
尼崎・近松の歴史と下坂部小学校
広済寺(国指定史跡)
近松門左衛門の像(近松公園)
執筆中の近松門左衛門
尼崎市久々知にある広済寺(こうさいじ)には、江戸時代に人形浄瑠璃や歌舞伎の世界で活躍した劇作家、近松門左衛門の墓所があります。
近松門左衛門は、江戸時代に一度廃れていた広済寺を再興した日昌上人と親交があり、たびたび広済寺を訪れていただけでなく、本堂の裏にある仕事部屋で執筆活動をしていたと伝えられています。
尼崎市では、市制70周年を迎えた1986年から「近松のまち・あまがさき」をめざして様々な取組を行っています。広済寺の隣接した近松公園には、市民の手により設立された近松記念館があり、過去帳、近松愛用の文机、手紙など,近松ゆかりの資料が多数展示されています。
人形のお墓参り(大近松祭)
下坂部小学校浄瑠璃クラブの寿式三番叟(大近松祭)
広済寺では毎月10月の近松の命日に合わせて、大近松祭として法要と墓前祭が行われています。大近松祭に近松記念館では、文楽協会による文楽上演のはか、近松音頭保存会による踊りと合わせて、下坂部小学校浄瑠璃クラブ・和文化クラブが「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」を上演するなどして、近松の業績をたたえ、伝える催しを行っています。
また、尼崎市では広済寺、近松公園一帯を「近松の里」と名付けて、市民が歴史や文化とふれあえるよう整備しています。地域においては、財団法人近松記念館、近松音頭保存会、近松かたりべ会など、市民の手による活動が進められています。
近松公園
広済寺、近松記念館などの「近松の里」を校区にもつ下坂部小学校は、明治10年創立の伝統ある小学校です。校歌には「大近松の名のもとに 芸術の華 永久(とわ)に咲く」と歌われています。下坂部小学校では、地域の人々が誇りとし、校歌にも歌われている近松門左衛門に親しむ学習を「近松郷土学習」と位置づけ、生活科や社会科、総合的な学習で取り組んでいます。また、浄瑠璃クラブや和文化クラブを立ち上げ、地域の方々の協力と指導を得ながら、三味線、太鼓、踊り、語りなど、近松ゆかりの芸能に親しんでいます。平成24年度からは3年間、尼崎市教育委員会の指定を受け、「特色ある教育活動推進事業」に取り組みました。また、その後も「近松郷土学習」を教育課程の一つの柱として位置づけ、各教科、特別活動において系統的かつ教科横断的な取組を進めています。
横断的・縦断的なカリキュラムの編成
地域との連携を深め、郷土愛を育むことを目的として、地域に開かれた参観日「近松デー」を中心として、生活科や総合的な学習の時間において「近松学習」を取り入れ、工夫した実践を行っています。平成24年からは、本校の児童が、この郷土に生まれたことを誇りに思い、次の世代に伝えていく気持ちを持てるようにしようというねらいで、「わたしたちのふるさと発見」~伝統を楽しもう・引き継ごう・伝えよう~を合い言葉に、様々な教科、特別活動において、「近松」に親しむ教材を取り上げ学習に取り組んでいます。
また、年間計画を立て計画的に学習を進めるとともに、学年に応じた系統的な学習ができるよう、各教科、特別活動と関連させ、横断的・縦断的なカリキュラムを編成しています。
近松郷土学習の取組 ~研究と関連づけて
下坂部小学校では、「近松郷土学習」を教育課程に位置づけることと合わせて、「学び合い高めあう心豊かな児童の育成」~対話や近松郷土学習から学びを共有し、深め合う授業の創造~というテーマで、「近松郷土学習」を研究の一つの柱として取り組んでいます。「近松を学ぶ」だけでなく、「近松郷土学習を通して学ぶ」という考え方を全教職員が共有して取り組みを進めています。
具体的には次のような取組を行っています。
例えば、2年生は生活科で校区に出かけ、町探検を通して近松ゆかりのものを発見する活動を行い、それぞれが発見したものを友だちに伝えるという学習をしています。3年生は2年生の学習を踏まえて、「もっと知りたい近松の町」というテーマで、尼崎市を「近松の町」ととらえ、さらに広い視点で学習します。毎年、体育大会の前には4年生とその保護者が学年行事として、地域にある「近松音頭保存会」の方々を学校に招き、近松音頭を教えていただいています。体育大会には再び保存会の方々に来ていただき、保存会の方々と4年生とが一緒に近松音頭を踊り、その輪に他の学年の児童や保護者、地域の方々が加わって一緒に踊り、地域との交流を深めています。4年生は2学期には「近松について調べ学習をしよう」というテーマで2年、3年生までで学んだことを、さらに探求していくという活動を行っています。
全校で「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」に取り組む ~帯学習への位置づけ~
浄瑠璃クラブ、和文化クラブの取組
浄瑠璃クラブは、今から約30年前に、近松にゆかりのある伝統芸能に親しむことを目的に課外クラブとして設立されました。和文化クラブは、「課外クラブには参加できないけれど、ぜひ伝統芸能に親しんでみたい。」と希望する児童のために、数年前に課内クラブとして立ち上げられました。浄瑠璃クラブ、和文化クラブともに、三味線や太鼓の演奏、「寿式三番叟」の語りと舞いの練習をしています。また、クラブでは年に数回、地域の方々に三味線の指導をしていただいています。
浄瑠璃クラブと和文化クラブの練習の成果は、毎年10月に近松の命日にちなんで広済寺と近松記念館で開催される「大近松祭」や、12月に実施しているオープンスクール「近松デー」、地域の老人ホーム訪問などで、「寿式三番叟」の演目を披露しています。発表の際には、踊り手は本格的な文楽の衣装を身につけ、他の児童も三味線、太鼓、語りとそれぞれの役割を持ち、舞台に立っています。
「寿式三番叟」の上演(近松デー)
大近松祭
「大近松祭」とオープンスクール「近松デー」
また、12月の創立記念日には、学校で受け継がれている浄瑠璃を鑑賞し、地域の伝統文化に親しみ、理解を深めることをねらいとしてオープンスクール「近松デー」を実施し、保護者や地域の方々にも下坂部小学校の取組を見ていただいています。全校生や保護者、地域の方の前で、浄瑠璃クラブと和文化クラブの児童が本格的な衣装を身にまとい、児童による三味線や太鼓に合わせて「寿式三番叟」を上演しています。また、クラブの指導に来ていただいている三味線のお師匠さん方にも演奏していただくなどして、本物に出会う体験活動の場にもなっています。
今年度の取組についてはこちら↓
外部リンク
※「大近松祭」についてはこちら↓
http://www.archaic.or.jp/chikamatsu/now/festival.html
※「近松の里」についてはこちら↓
http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/chikamatu/055chikamatsu_sato.html