令和3年度 新たな課題に対応した人権教育推進校

令和3年度「新たな課題に対応した人権教育推進校としての取り組み」
1 研究当初の児童の状況と課題

 本校は、基礎学力の定着や基本的生活習慣が身についていない等、配慮を要する児童が定数在籍している。令和2年度あまっ子ステップアップ調査のアンケート調査の結果でも「家の人は自分のことを気にかけてくれている」「朝食は毎日食べている」などの質問項目では、全国の平均値を下回っている。一方で、「自分の力をできるだけ伸ばしたいと思う」の質問では、全学年で90%以上が「はい」と答えており、子どもたちの「やる気」が、成長に効果的に繋げられるよう、学校や家庭、地域が相互に連携して教育活動を行うべきであると考えた。

 これらを踏まえ、既存の校内における人権教育部に加え人権教育推進組織を立ち上げ、一人の人間として誰もが大切にされる存在であることを認め、たくましく未来を拓く生きる力を育成することをめざすこととした。また、保護者への啓発活動・基礎学力の向上・安心安全に過ごすことができる環境作りが、子どもたちの心豊かにたくましく生きる力の育成に繋がると考えた。

2 研究テーマ

「児童の自尊感情を育み、心豊かにたくましく生きる力の育成」

  ~自分の大切さとともに 他の人の大切さを認めることをめざして~

3 ねらい
 教育活動全般を通して、児童や保護者の人権に関する知的理解や人権意識を高め、児童の自尊感情や自己有能感、規範意識を高める。
4 具体的な取組
(1)研究の概要
(2)各領域における取組
ア 教科における取組
取組の概要(教科)
  ・指導案(1年国語 4年国語
イ 道徳における取組
取組の概要(道徳)
・指導案(1年 2年 3年 4年 5年 6年
人権だより
ウ 特別活動における取組
取組の概要(特活)
    ハッピーハート活動
  エ 総合的な学習の時間における取組
取組の概要(総合)
指導案(5年)
(3)人権教育の取組
  ア 授業改善について

 「伝え合うわかり合う授業づくり」「想像力共感的に理解する力を育成する授業づくり」について、尼崎市版授業改善の視点に基づき重点目標を定めた。

(ア) 主体的な学び
  ・授業の目標を明確に持っている
・クラスの全員が学習課題を共有している
・学習を振り返る時間を確保している
(イ) 対話的な学び
・他者と対話する前に、自分自身の考えを持つ
・子供たちに話し合いの目的を意識させている
・相手のことを意識しながら、話し合いをさせる
(ウ) 深い学び
・調べたことや話し合ったことを基にして、自分の考えを形成している
・何が課題なのかを自分で考え、解決策を見出している
イ 家庭への啓発活動

 毎月末に「人権教育だより」を各家庭向けに毎月発行した。誕生日カードやハッピーハート活動などの人権教育活動の報告、人権啓発につながるコラム、家庭読書活動での保護者のコメント紹介などで、本校の人権教育活動について興味をもってもらえるような内容にした。

 保護者にも人権について考えてもらう機会となるよう、12月に人権参観・懇談を行った。

 また、保護者や教職員対象に人権教育研修会や、認め合う温かい学級づくりをめざし子どもの見取り方についてカウンセリングマインド研修会を実施した。

5 成果と課題
(1)基礎学力の向上

 児童の規範意識が高まり、落ち着いて授業を受けるクラスが増えた。また、自信をもって発表する姿や児童同士で教え合う姿も見られ、主体性や協調性、認め合う心が育ってきたように思う。

 令和3年度あまっ子ステップアップ調査の結果からも「めあてを決めて、学習に取り組んでいる」などの「学びの基礎力」や「自ら学ぶ力」に関する項目、「学習や生活をよくするための話し合いや活動をしている」などの「対話力」や「支え合う力」に関する項目では、前年度に比べて結果が向上している学年がほとんどであった。しかし、全ての学年で結果が向上したわけではない。特に「支え合う力」に関しては、学年によって大きな差があることから、来年度に向けては、人権推進担当教員を中心に「個」に対するアプローチを重点的に取り組む必要があると考える。 

(2)保護者への啓発活動

 人権参観・懇談会では、多くの保護者が参加し、本校の人権教育に協力したいという保護者からの声があがり、家庭への啓発活動に成果を感じた。

 しかし、令和3年度あまっ子ステップアップ調査の結果から「朝食は毎日食べている」や「夜は決まった時間に寝ている」などの「基本的生活習慣」に関する項目では、前年度と変わらず、全国の平均値と比べ低い値を示していた。来年度も、継続して養護教諭を中心とした基本的生活習慣の向上への啓発活動が必要だと考える。

 12月に行った家庭読書活動のアンケート調査では、様々な事情からすべての家庭から協力を得るのは難しいと感じた。家庭への啓発活動を継続するうえで、各家庭の事情を考慮しながら、できるだけ多くの家庭に人権教育活動に参加してもらえるよう啓発を推進していきたいと考える。

 ハッピーハート活動では、全校児童が意欲的に取り組んだ。3学期の活動では、総計約3000枚のハッピーハートカードが使われた。児童全員のコメントが貼り出され、掲示を見たり放送を聞いたりすることで、友だちの良さを見つけ、認め合う力を育むことができた。人権参観の時にも掲示をし、保護者に対する人権教育の啓発にも繋がった。

 令和3年度あまっ子ステップアップ調査の結果で、「友だちのよいところやがんばりを認めて伝えあっている」などの「学級力」や「共生力」に関する項目で、前年度の結果に比べて結果が向上した。全国の平均値と同等の値を示している学年・学級が多数あったことから、子ども達の自己有能感を高めることができたと考える。

(3)おわりに
 すべての教育活動で人権教育は行われるということを念頭に、人権教育推進担当教員を中心に教職員一丸となって人権教育の推進をしてきた。本年度の人権教育の取組を図に表し、教職員の共通理解をはかることができた。また、本校のスクールカウンセラーや外部講師による全教員対象の校内研修を実施できたことも、教職員の人権意識を向上させることに繋がった。